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  じんぐ〜べ〜、じんぐ〜べ〜、じんぐ〜お〜ざうぇ〜

 車のラジオからクリスマスで定番な曲のオリジナルが流れている。俺は時計を見て、はぁ、とため息をついた。

「そんな顔をするな。もう一件で今日は終わりだ」

「うす」

 そうは言うものの、芳野さんも結構渋い顔をしている。普段からあまり笑うということをしない人で、ぱっと見だったらいつもの顔と間違えそうだが、毎日一緒に仕事をしているとわかる。芳野さんも少し、すこぉしばかり不機嫌だ。

「岡崎、今夜は予定、入ってるか」

「入ってますよ。芳野さんもそうでしょ」

「大事な人がいると、憂鬱になるものだな」

 二人して同時にため息をつく。

「まったく、よりにもよってこのタイミングで調子が悪くなるとはな」

「確かあそこのって……」

 旧式の柱上変圧器だったという気がした。新規格になってからずいぶん整備がしやすくなったという話だったが、裏返せば旧式のはメンテナンスに手間がかかる、ということになる。

「面倒なことになりそうだな」

 俺の嫌な予感を裏付けるかのように、芳野さんが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 せいいっぱい甘くしてみましたが、いやぁ、やはり難しい物ですの、お二人さん
 略して「せいやの二人」

 

 

 

 

 

 

「おし、ご苦労さん」

 事務所の前でバンから降りると、芳野さんが俺の方を叩いた。

「お疲れさまっす」

「岡崎、お前は時間はどうだ?」

 腕時計を見て、俺の精神的重荷が追加された。もう心の中では石抱きの刑を食らっているような感じだった。

「……終わってますね。芳野さんは?」

「……厳しいな。しかし岡崎、忘れるな。俺達の仕事は、街の人たちの暮らしを支えることなんだ」

 あ、何か変なスイッチが入った。

「つまりは愛だ。俺達の街への愛が、光となり、温もりとなり、繋がりとなるんだ。それを胸にしまっておいてくれ。そうすれば」

「そうすれば?」

「お前も今夜帰ったときに恨みつらみを言われる責め苦を少しばかり和らげることができるかもしれない」

 かなり効果の薄い愛のパワー。俺はげんなりした顔で事務所の扉をあけた。

「お、帰ってきたぞ」

「はい、お疲れー」

「ご苦労さん」

 待ち構えていたかのような声に、俺達は戸惑った。何だ、何かあるのか?

「いやぁ岡崎君、芳野君、ご苦労様。こんな土壇場になって外での仕事なんてすまなかったね」

 親方が笑顔でやってきた。俺はふと事務所に違和感を覚え、親方に聞いてみた。

「あ、あの」

「うん、何だい?」

「俺達が出ている間に、年末の片づけを始めてたんすか?」

 すると、先輩の一人が俺の方に乱暴に腕を回した。

「おいおい、俺達じゃねえよ。にしても岡崎、おめぇ、何だ?よっぽどいい星の下で生まれたようだなぁ」

「は?何の話です?」

「ヘイミスター、ミスター岡崎ノグッドラックニ嫉妬スルノ、ヨクネイネ」

「え?ジョニーさんも……あれ、俺の幸運、ってどういうことですか?」

「とぼけんじゃねぇよ、全くよ。岡崎君よ、お前自分がどれだけ幸運か、わかってねえんじゃねえか?」

 別の先輩が話に参加してくるが、俺には何が何だかサッパリだった。すると、最初の先輩が笑顔を引きつらせて言った。

 

「あんな美人で気立てのよくて掃除のうまい彼女がいることのどこが幸運じゃないんだよ」

 

 

 ……あー。智代か。智代じゃー、しょーがねーよなー

「って、何でみんなあいつの事知ってるんすか?!」

「ん?ああ、帰ってきたんだな、朋也」

 振り返ると、事務所の給水室から湯飲みを乗せたお盆を手にした智代が笑っていた。

「おう智代ちゃん、お茶さんきゅな」

「いえ、こちらこそ。朋也がいつもお世話になってます」

 湯飲みを渡された先輩方は一様に「いい子だなぁ」という風な笑顔を浮かべていた。あの〜、人の彼女でそんなに和まないで欲しいんですけど。

「うるせぇっ!お前は少しぐらい智代ちゃんの和ませパワーを俺達にも分けろ。つーか別れろ。んでもって智代ちゃんを俺に進呈しろ」

「物じゃないんですから。それに仕事を首になってもあいつと別れるのは嫌です」

 きっぱりというと、その先輩はがくぅ、と崩れ落ちた。

「ここには……事務所には女性成分が足りないんだよ……何だよあの子……オルレアンに降り立ったジャンヌ・ダルク、戦場病院に舞い降りたナイチンゲール、アフリカの子供達に笑いかけるマザー・テレサ……そんな感じだよ」

 うわぁ、何だか英霊化されてるぞ、俺の彼女。

「あ、岡崎君、今日はもうこれでいいよ」

 なぜか先輩チームによって羽交い絞めにされて四肢を極められている俺に、親方が笑った。

「もうそろそろこっちも終業だし、さすがにもう仕事は来ないだろうからね。あ、芳野君も帰っていいよ」

「え、でも……」

「もともと岡崎君も芳野君も早退することになってたんだから、無理を言ってたのはこっちだよ」

「何だ、岡崎。お前は智代ちゃんより仕事のほうがいいのか?よし、智代ちゃん、先輩と代わりにデートしよう」

「気持ちはありがたいのだが、先輩にはもっとお似合いな女性がいると思う」

「特攻玉砕っ?!」

 白く燃え尽きた先輩を哀れみの篭った目で見ながら、俺はロッカー室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「でも何でお前があそこに?」

 事務所を出て歩き出しながら、俺は智代に聞いた。本来の予定では、俺は早退した後、予約を入れた店で智代と落ち合うことになっていたのだが、今時計を確認すると予定の時間から一時間半ほど遅れてしまっていた。

「うん、三十分ほど待っていたんだが、やっぱり待ちきれなくてな?お前の事務所に挨拶も兼ねて様子を見に行ったんだ。ああ、それから少しばかり掃除もさせてもらったな」

 何と簡潔な要約。わかりやすいことこの上ない。あと、彼氏としての威厳も形無しこの上ない。おまけに「まったく、仕方のない奴だな」までついてきましたよ、ええ。

「しかし今からではあの店は予約がキャンセルなんだろうな」

 ううむ、と唸ると、智代がくすりと笑った。

「別に私はどこだっていいんだけどな」

「ん?そうなのか?」

「ただし条件が一つあるが」

 こいつがそういう奴じゃないことは、よおっくわかっているが、念のため神様に「食事代が最低一名三万以上のレストランとかいう条件じゃありませんように」と祈っておいた。

「何、簡単なことだ」

 俺の横から軽いステップを踏み、そしてくるりと俺の目の前で回ってみせる。顔には「どうだ?今のは女の子らしかったんじゃないか?」という笑顔。

「どこに行こうとかまわないが、お前と一緒じゃなきゃ嫌だからな」

 かぁぁあ、という音が聞こえそうなくらい、顔が一瞬にして赤くなる。

「……恥ずかしいことを言ってしまった気がするな」

 今更もう遅い。

「ま、まぁ、どこに行くかはおいおい決めよう。俺も智代とならどこだっていいからな」

 反撃すると、案の定顔を真っ赤にするともぴょん。ぷい、と顔を背ける仕草がとても女の子らしくて可愛いと思う。

「そ、そんな恥ずかしいことを言うなっ!こっちまで顔が熱いじゃないかっ」

「いや、最初に言い出したのはお前だし」

 全く、朋也はずるいんだから、と呟かれるが、俺としてはただ単にレスポンスを返しただけなのでずるいというのはおかしいと思うが、読者諸君はどう思う?

「あ、それよりあれを見てくれ」

 智代が急に駆け出す。揺れるその長い髪を追って、俺はある店の前で止まる。

「さっきここに来るときに見かけたんだ。とってもかわいくないか?」

 智代が笑いながら視線を送る先には、サンタ衣装のくまさんが。

「そうだな」

「こういうクリスマスらしいくまさんも、いいんじゃないか?」

 智代が目を輝かせた。ここで「よし、大好きな智代の笑顔のためなら、こんなもん安い安い。ははは」と言って店に入っていけば、絶対に俺の株が上がるだろう。

「そうだな……」

 しかし俺はあえてそっけない返事をして、そのまま歩き出した。少しばかり胸がちくりとしたが、致し方のないことだった。まぁ、さっきちょっと散在したので、今買ってくれとせがまれても、そんな金が財布にない、というのも事実だった。

 それからしばらく無言で歩いた時の気まずさといったら、形容しがたいものがあった。

 

 

 

 

 

 

 

「クリスマスと簡単に言うけどな、話を現実的に考えると、とても過酷だったことがわかるぞ?」

「ふうん。例えば?」

「例えば、十二月の終わりというのに、羊飼い達は野原で羊の面倒を見てやらなくてはなかったんだ。そして天使がイエス・キリストの聖誕を伝えると、着の身着のままでマリアやヨゼフ、イエスの生まれた宿まで歩かなきゃいけなかったんだ。真冬の夜の間を、だぞ?」

「それはきついな」

「それにマリアだって大変だったんだ。住民登録のために、遠い故郷までロバに乗せられて連れて行かれたんだぞ。身重なのにだぞ?そしてベツレヘムに着いたはいいが、宿がどこでも一杯でな?仕方がないから宿の馬小屋に泊めてもらったんだ。そんな劣悪な環境でさぁ救世主を産め、と言われても厳しくはないか?私だったら、傍に朋也がいないとそんなことは決してできないからな」

「はいはい。で、そのお話がどうしたんだ?」

 すると智代はすっごくいい笑顔で俺に笑いかけた。

「だからそういう先人達の苦しみや辛さに比べたら、こうしてファミレスの列に並ぶのも何でもないな、と言いたかったんだ」

「……」

 俺達は今、智代のアイデアでとあるファミレスに行くことにした。何でも智代の知り合いがそのファミレスで働いている、ということだったので、俺もまぁいいかな、と思ってオーケーしたわけだが、考えてみればこの日この時に予約などをしていないとどういうことになるのか、もう少し考えるべきだった。その結果、そのファミレスの前でしばらく並んでいなきゃいけなかったりした。

「……すまない」

 徐に智代が目を伏せた。

「おいおい、何のことだよ」

「私がもう少し考えていれば、こんなことにはならなかった。はは、馬鹿だな私も。そうだな、こんな私じゃ、朋也にも愛想を尽かされてしまうな」

 しゅん、としょげ返る智代。俺は「そんなことない」と言いかけて、やめた。

「ちょっと、朋也っ!」

 その代わり、しょげ返って小さくなってる智代を抱きしめた。智代のコートのふわふわした部分がちょうど鼻に当たる。智代のいい匂いがした。

「なっ、いきなりだぞ、朋也っ」

「いや、こうすりゃ寒くないし、智代が笑ってくれるかな、と思ってさ」

「え」

「まずそもそも俺が約束の時間に間に合わなかったのが悪かったんだし、予約してないんだったらどこだってこんな感じだ。それに何より、俺がお前に愛想を尽かすことなんて、ありえないって」

「朋也……」

「俺は、お前にずっと笑っててほしいしな」

少しばかり見開かれた、その吸い込まれそうな瞳に見入る。そしてだんだん顔が近づいていって、智代の瞼が降りていって

 

 

「お待たせしましたーっ!二名様ご案内しますーっ」

 

 

「……」

「……」

 神様のばかやろー、と河南子風に心の中で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 店内に入ってようやく人心地がついたとき、不意に声をかけられた。

「あら?岡崎さんじゃないですか?」

「ん?お?」

 振り返ると、すごく懐かしい顔が二人。

「仁科に、杉坂だっけ?久しぶりだなぁ」

「はい、そうですね。元気そうですね、岡崎さんも坂上さんも」

「まぁな」

 仁科と杉坂には、古河達と一緒に演劇部の公演をやった時にいろいろと世話になっていた。あの頃の俺はとにかく何かをやっていないと壊れそうで、夢中になれる何かが必要で、まぁ必死だった。だから、そんな何かがうまくいくよう手伝ってくれた二人には、感謝するばかりだった。

「……ほう?」

 不意に背後から底冷えのする声が聞こえてきた。何と言うか、今の時期の琵琶湖に投げ入れられたような、そんな感じだった。

「知らなかったな、朋也はいつの間に仁科さんと杉坂さんと仲良くなっていたんだ?」

「え、い、いやぁ、昔ちょっとな」

「やましいことは何もありませんよ、坂上さん。何せ同じクラスになってからは会う度に岡崎さんがどうの、という話しかしなかったんですから」

 それを聞いて、俺達二人はトマトも恥じ入るくらいに顔を赤くした。そ、そうだったのか。学校で智代の話す話題ってのは、俺のことだけだったんかい。

「りえちゃん、店長が見てるよ」

「あ……じゃあ、メニューはこちらですので」

「あ、ああ」

 慌てて次のお客の対応に行く仁科と杉坂。いやぁ、大変なんだなぁ、とか思いながらその後姿を眺めていたら

 ぐい、にゅぎっ

「あだだだだだだ」

 手の甲をペンチで摘まれ、そのまま捻られたかのような激痛が腕の中を駆け巡る。

「ええっと、坂上サン?俺、今何かしましたか?」

「別に。朋也がエッチな目で私と同年代の美少女達を眺めていても、私みたいな可愛くない女には関係のないことだな」

「エッチな目って、後ろ向いてたのにわかるのかよ」

「絶対にいやらしかった。仁科さん達の制服姿に見入ってた」

 いや、確かにあの制服は前と後ろが結構露出してるなぁ、とは思ったし、智代がそんな制服を着たらうわすげぇオラ何だかワクワクげふんげふん、いえいえ、そんな妄想は決してしていません。

「それに可愛くないって何だよ。俺にはお前ほど可愛い奴なんて知らないって」

「なっ……」

 絶句する智代。こういう時は変に言い繕ったりせずに、こういう恥ずかしいことをそのまま言ってやると効果がある、と経験上学習したのだった。

 まぁ、実際にこいつが一番可愛いけどな。

「朋也はやっぱりずるい……そんなうまいことを言っても、私はほんの少ししか信じてやる気にはならないんだからな」

「や、そういうところが可愛いんだって」

 わしわし、と髪の毛をなでてやると、智代は上目遣いで「うー」と唸った。HIT。

「それより、大学の方はどうだ?二学期終わったってところだけど、感想は?」

 智代は今年の四月から、第一志望の大学に通っていた。この街から二時間ほど電車に乗らないと行けない、遠い町だったが、まぁ俺と智代の愛の前では遠距離恋愛の障害なんてあってもなくても同じようなものだった。

「そうだな……やっぱり面白いな。学校では考えもしなかったいろんな物の見方があって、それらに触れていくと、私の世界も広がっていくような気がして……」

 いい笑顔だった。そんな智代を見て、俺は少し安心した。やっぱり、大学に行くように勧めて正解だった。こいつは、こいつの世界はまだまだ広がっていく。いろんな人と触れ合って、いろんな出会いがあって。正直、俺とは違う世界だった。智代がそんな世界にいて満足していることが嬉しい反面、少し寂しくもあった。

「でも、大学に行って再確認したこともあるんだ」

 そっと両手を俺の手に包むように乗せた。その柔らかさと暖かさが俺を一瞬はっとさせる。

「自分がまだまだだということ。家族の大事さ。そして何より」

 毅然とした眼差しを俺に向ける。それは弱音ではなくて宣言。弱さではなく、強さ。

 

「私にはお前が必要だということ。お前がどうしようもなく好きだということ。それを改めて実感するんだ」

 

 その華奢な指に、空いた手を乗せてみた。そしてそれを愛しげにさする。

「俺も、お前が大好きだ。お前がいてくれるから、やっていけるんだ。お前と会えるから、頑張れるんだ」

「……朋也」

 俺達はすばやく唇を合わせた。知っているのは当事者と、あと少しキザな言い回しをすれば、ツリーに飾ってある天使ぐらいだった。

 

 

 

 

 

 

 

「さすがに寒いな」

 店を出てから、俺は呟いた。

「ああ、そうだな。朋也、風邪はひいてくれるなよ?朋也が倒れてしまったら、私は泣いてしまうぞ?」

「じゃあ、何とかしなきゃいけないな……って、智代?」

 見ると、智代がポケットに手を入れたまま肘を突き出していた。

「な、なぁ朋也、腕を組まないか?」

 はにかみながら、智代が笑う。クリスマス特別HIT。

「恋人だから、いいだろ?それに、そうすればあったかいだろうし……それとも、だめか?」

 その最後の一言でころっと落ちました、はい。

「ふふ、やっぱり暖かいじゃないか」

 肩に頭を乗せてくる。ゆっくりと右側に感じる温もりが心地よかった。

「……どこ、行く?」

「……お前に任せる」

 俺の右腕を引き寄せながら、甘えるように囁く。

 イルミネーションに彩られた町中を抜け、いつの間にか俺達は始まりの場所にたどり着いていた。

「なぁ智代」

 桜並木に腰掛け、互いに寄りかかりながら俺は俺の大好きな少女に言った。

「うん、何だ」

「目を……瞑っててくれないか」

 訝しげに俺を見る智代。そんな彼女に俺は笑って見せた。

「な?少しだけでいいからさ」

「変なことをするんじゃないんだったらな」

 そう言って目を閉じる。俺は苦笑すると、バッグからそれを取り出して智代のひざに乗せた。

「もういいぞ」

「……これは……でも、いつの間に……」

 智代のひざに乗っていたもの。それはさっき彼女がじっとショーウィンドウ越しに見ていたくまのぬいぐるみだった。

「お前なら、あれ、好きなんじゃないかなって思ってさ。前もって買っておいたんだ」

「……そうだったんだな」

 ぬいぐるみを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめてから、満面の笑顔を浮かべた。

「ありがとう朋也。すごく、すごく嬉しいぞ」

「ああ。喜んでくれて、俺も嬉しいよ」

「そんな朋也に、私からもプレゼントがあるんだ」

 いそいそとバッグの中から包みを出して、智代は俺に手渡した。

「今、開けていいか?」

「うん、見てくれ」

 包みを破いて出てきたものを、俺はまじまじと見た。

「朋也は冬でも外で仕事をするからな。指が悴んでは困るだろう?」

 出てきたのは智代が今はめているのとよく似た茶色の手袋。

「智代……ありがとな」

「うん、どういたしまして。ふふっ」


 嬉しそうに笑う智代が愛しくて、そんな智代に想ってもらっていることがたまらなく嬉しくて、俺は彼女を抱き寄せた。

「ん……」

 今度こそ誰も見ていないこの場所で、俺達は唇を重ねた。そしてそのまま芝生に寝転がる。

「あ……雪だ」

 不意に、あどけない少女の口調で智代が言う。仰ぎ見ると、漆黒の空から白い綿雪がふわふわと落ちてきた。

「ホワイトクリスマスだな」

「ああ、そうだな」

 俺達は顔を合わせて微笑み合うと、じゃれ合うようなキスをして言った。

 

 

「メリークリスマス、智代」

「メリークリスマス、朋也」

 

 

 

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