七月の初めともなると、家の中に日中いるのが苦行に等しくなった。普段俺と翔は野球部の練習がある日はそっちに顔を出したり、ない日は図書館や漫画喫茶でクーラーの恩恵に与ったりして昼間の時間を潰していた。だから、そんな俺たちが俺の家にいたということは、時間は夕方ぐらいだったんだろう。
少しばかり蒸し暑い部屋の片隅で、小さな扇風機が事態を改善させようと努力していた。俺はふいぃ、と背伸びをすると視線を目の前に戻した。
「で、何書く」
翔が気だるそうに聞いてきた。
「さぁな」
「ちゃんと書かないと、こっぴどく怒られるよね」
「まぁな」
怒るのは言い出しっぺの杏先生か、それともそれに乗ってきた母さんか、それとも両方か。どうも父さんや春原のおじさんは特に怒らない気がする。
「にしてもねぇ……こんなのに願い書いて叶ったら、世の中滅茶苦茶になっちゃうよねぇ」
「そんなこと言ったら神社や寺の賽銭箱は商売上がったりだろ」
そう言いつつも、俺は心の中で翔に同意しながらため息をついた。目の前には、まだ何も書かれていない短冊があった。
ことの発端は、その日の午後ぐらいだっただろうか。どこから帰る途中だったのかは忘れたが、とにかくその帰り道で携帯にメールが来た。
『今日は七夕だったなっ というわけでただいま毎年恒例チキチキ短冊に願い事を書きましょう大会を開催する 早く帰宅されたし 母』
「何だこりゃ」
「え?どれどれ」
俺が携帯にしかめっ面をしていると、翔が覗き込んできた。
「うっわだっせぇ。毎年朋幸のところじゃこんなことしてるの?」
「いや、してないけど」
「へへん、高校生にもなって七夕だなんてねぇ……」
と、翔をいっそ殴ろうかとか考えていると、翔の携帯にも着信が来た。
「お、メールだ」
「克美からか」
「へっ、これだからモテる男はねぇ……何だ、おふくろからか」
残念そうに携帯を見る翔。捕捉すると、克美とは翔が子供のころからメールのやり取りをしている女の子である。本人たちは彼氏彼女の関係ではないと言い張るものの、二人が知り合ってからずっと翔がラブレターの返事に頷かなかったことを考えると怪しいものだった。まぁ、これはまた別の話な訳だが。
「で、杏先生何だって」
「……」
見ると翔がうんざりした顔で携帯をしまおうとしていた。
「何だよ、何て書いてあったんだよ」
「嫌だね。いくら朋幸でも見せていい秘密と見せちゃいけない秘密があるんだ」
「お前の寮にあるエロ本の内容とか」
「違うよっ!つーかいつの間にそんなの把握してるんだよっ!!」
「長い付き合いだからな」
「そんな付き合い嫌だよっ!」
「さてと。これを杏先生が知ったらどうなるかなぁ……」
にやりと笑うと、翔は一瞬顔を強張らせ、そしてすごすごと携帯を俺に見せた。
「あー、なになに……」
『今日は七夕だから、岡崎家に集まって短冊書いたりするから、朋幸君と直行してね 母』
「……」
「……」
「………………」
「……はいはい。どうせ僕も高校生になっても七夕を楽しむダサい奴ですよ」
「わかればよろしい」
半ば石になって固まっている翔を置いてきぼりにして、俺は家への帰り道を歩いた。
ほしにねがいを
で、まぁ。
二人仲良く帰って、二人仲良く短冊をもらい、二人仲良く何を書こうか悩んでいるところだった。
「にしてもさぁ」
ぐてー、と寝転がりながら翔が言った。
「何つーかその、この頃さ、絵本の中の世界がねぇ、想像つかないというか」
「何だそれ」
「ほら、昔はさ、絵本の絵を見ればこんな人がいて、こうなってってわかったじゃん。でもこの年になるとそれをリアルに思い描けないっていうかねぇ」
「リアルに……ね」
「こう、何ていうかさあ、僕らの周りの人が当てはまればいいのに」
周りの人を童話に当てはめる、ねぇ。
岡崎家バージョン
昔むかし、天の川のほとりに、天帝の娘である織姫が住んでおりました。ある日織姫が川のほとりで機を織っておりますと、彦星が通りかかり、そして二人は一目ぼれしました。
「一目ぼれだ。どうだ、これは女の子らしいとは思わないか」
「ああ、お前ほど女の子らしい星はいないさ」
「彦星……」
「織姫……」
「彦星」
「織姫」
「彦星っ!」
「織姫っ!!」
そして二人は付き合うようになりましたが、こまったことに織姫は生徒会長の役目をほったらかして彦星といちゃいちゃするようになりました。特に織姫は、初恋というのも手伝って彦星の想いに自制心が効かなかったのです。なんと、天帝にしか使用の許されないほうき星に文を乗せて、彦星に送ってしまったのです。怒ったのは天帝です。天帝は織姫には内緒で彦星と話をしました。
「織姫は優秀な機織だ。人望もある。しかしその一方で、遅刻、無断欠席の常習者と親しくている。その者に連絡を取るためにほうき星を使用したり、機織場から離れて逢引したり……わかるな?彼女が問題を起こしているのは、彦星、お前に関することだけなんだ」
その言葉を聞き、彦星は悩みましたが、結局は織姫が更に高いところで輝けるようにと、とうとう言ってしまいました。
「別れよう」
「……そういう冗談はやめてくれって言っただろう」
「お前はもっと高いところで輝くような星だろ。でも俺と一緒じゃ辿り着けないかもしれない」
二人はすったもんだ挙句、別れてしまいました。そんな別れ話をしなければならなかった彦星ももちろん辛かったのですが、織姫はもっと悲しみました。しかし二人はその悲しみを原動力に変えて頑張ったため、天帝や星ぼしも二人の仲を認めました。しかし、くっついた二人があまりにいちゃいちゃするので、他の星たちは砂を吐いてもがき苦しみました。天帝はそれを見て「お願いだからいちゃいちゃするのは一年に一度にしてくれ」と懇願したので、織姫と彦星は七月七日の夜、無制限限界突破のいちゃいちゃナイトを実現するのでした。
ごらんなさい、天の川を。あれは全て、星たちが二人の甘さに中てられて吐いた砂なのですよ。
「何だかマジでありえそうだけどな」
俺はぽりぽりと頬を掻いた。
「でもまぁ生徒会長とか変な単語が出てきたし、母さんと父さんがいちゃいちゃを一年に一夜だけにとどめるなんて無理だし、そもそも母さんと父さんが別れるなんて考えられないだろ」
「そうだねぇ」
翔が苦笑いをした。あの二人は実年齢を口にしてはいけない領域に差し掛かっているのにもかかわらず相変わらずラブラブでいちゃいちゃである。本来なら外見的に少しばかり無理があるはずなのだが、(遊びに来た友人に言わせれば)二人の外見が普通とはかけ離れているので様になっているらしい。要するに、父さんの歳の取り方は俳優のように渋く、母さんにおいては特殊メイクでも使っているかのように若く見えるのだそうだ。そんな二人が別れ話はおろか、本気の口論をしたところすら、俺には覚えがなかった。
「あ、でも今の面白かったよね。ちょっと他の人でも試してみない?」
「例えばお前の両親とかな」
そう言うと、翔の笑顔が固まった。
「い、いや、何つーか、僕んとこはいいよ」
「人んところの両親で思い浮かべたんだから、それぐらいいいだろ」
春原家バージョン
昔むかし、あるところに牛飼いがおりました。牛飼いは少し不真面目なところがあり、悪友とともにゲーセンでお金を使ったりしたので、少しばかり懐具合が寒かったのでした。
「困ったねぇ……今月、どうやってやりぬこう……お」
あるとき、牛飼いが歩いていると、松の枝に見事な織物が掛かっておりました。
「へへん、これはお金になりそうだねぇ……もらっちゃお」
そして牛飼いは織物をネコババして、家にもって帰りました。あとで市場に売りに行くつもりだったのです。
さて、牛飼いが臨時収入のあてもできたことだし、と悪友のところに飲みに行こうとすると、先ほどの松の下で、この世のものとは思えないくらいの美女が、途方に暮れておりました。
「何だか困ってるっぽいね……あ、でも関係ないか」
牛飼いが通り過ぎようとすると
「ちょっとアンタ、かわいい女の子が困ってるのに、素通りする気?」
「へ?」
少々居丈高に助けを求める美女でした。話によれば、松に織物をかけていたのだけれど、それがなくなってしまったので帰るに帰れない、ということでした。
「ん?何よ、急に汗かいたりなんかして。どうかした?」
「い、いや、べ、べつに何でも、ハハハ、ないよ」
「にしても困ったわねぇ……今夜、どうしよ」
ほとほと困り果てた様子の美女。すると、牛飼いの心の中によこしまな思いが現れました。色煩悩、色惑、俗に言うエロです。
「ぼぼぼ、僕のところに泊まってけよっ!」
「……いいの」
「もっちろん!!」
「そう、じゃ、ありがたく……あ、でも変なことしたら、まぁ覚悟なさいね」
「ひぃぃいいいいっ」
どこからともなく取り出した辞書と美女の壮絶な笑みに、牛飼いは情けない悲鳴をあげてしまいました。
さて、いわゆる同棲をはじめた二人ですが、最初はギクシャクしていたものの、いつの間にか二人は互いのことを好きになってしまいました。しかし、牛飼いは少し困ってしまいました。
「あの布切れ、やっぱり返したほうがいいよなぁ……でも返したら怒るよなぁ」
いろいろ悩んだ末、牛飼いは織物をエロ本に挟んで隠しました。しかし女性を甘く見てはいけません。牛飼いの秘蔵のエロ本はすぐに見つかってしまいました。
「ったく、こんなに溜め込んだりして……これだから男って奴は……ん?」
エロ本を処分しようとした時、女はその一冊に例の織物が挟んであったのに気がつきました。そしてそれを見て女は全てを悟ってしまいました。一瞬殺気に駆られた女でしたが、それでも牛飼いのことが好きだったので、結局は悲しく笑うだけでした。
女は実は天女、しかも天帝の娘だったのです。織物は天の羽衣で、これがなければ空の国に帰れないのでした。天女はその晩、全てを男に語ると、天に帰っていったのでした。めでたしめでたし
「めでたくないよっ」
「確かにめでたくないな」
話の八割を考えておきながら、俺はそう呟いた。
「大体それじゃ、何で七月七日なのか意味不明じゃん」
「だな。じゃあ、もう少し加えて」
後日談
天女が帰ってからしばらくして、凄まじい天気が続きました。一日中雷が鳴り渡った日もありました。赤い雨が降った日もありました。黒い雲の隙間から断末魔のような声が聞こえた日もありました。人々は戦々恐々として暮らしておりました。そんなある晩のことです。空が晴れ渡り、全てが静まり返ったあと、牛飼いの小屋の戸を叩く音がしました。
「ふえーい……誰だよ、こんな夜更けに」
「あたしよ、あたし」
その声を聞いて、牛飼いは戸をばたんと開きました。見ると、そこには天女がお供を従えて立っておりました。
「な、何でここに」
「ん〜、何ていうかね、そのね、迎えに来たっていうか」
「へ?」
天女ははにかんで笑いました。
「えっとね、帰ったは帰ったでいいんだけどね、ほら、あんたって一人だと掃除もできないしご飯だってちゃんと料理できないし仕事はサボるしで、ほっとけないじゃない。だから、今の今までずっとパパとごねて、まぁ、ちょっと手荒な喧嘩もしたかな、それでまぁ何とか話がついたんで、親への挨拶も兼ねて迎えに来たって訳」
原初のツンデレがそこにはありました。
こうして、牛飼いはツンデレ天女と共に天に昇りました。それが七月七日の夜だったので、その日は「娘のごり押し我侭が叶った日」ということで人々も天に願いを託したのです。 めでたしめでたし
「こっちはこっちで羽衣伝説っぽいし、短冊の意味もわかったけどさ。天女が空の国で大立ち回りってのが……」
「杏先生らしいだろ」
「うちのおふくろ、あれで結構ぞっこんだからねぇ」
春原のおじさんは面白い人で、おじさんを恋愛対象として捕らえる人はあまりいないんじゃないかと思うが、もし横恋慕の対象にでもなったら、それこそ杏先生は全面戦争を仕掛けるだろう。そして火の七日間で世界を焼き尽くすだろう。
「何それ」
「監督に見せられたアニメ」
「ふーん」
と、その時、ノックと共に扉が開いて、長い髪をツーサイドアップにしたかわいい女の子が顔を覗かせた。
「お兄ちゃん、朋幸お兄様、まだなの」
するとうんざりとした顔で翔が唸った。
「あのね、椿芽、いくら何でも朋幸にお兄様はないだろって何度も言ってるだろ」
「で、何度も朋幸お兄様は巴お姉様の兄だからそう呼んでいるだけだって言ったよね」
椿芽ちゃんは蔑むように翔を見た。何というか、「そんなことも覚えてないの?」と言いたげだった。
椿芽ちゃんは翔の六歳下の妹で、つまりは俺たちの五年下の仲間、とも言える。だらけ切って光坂の入試に一浪した翔とは違ってしっかり者で、理想の女性像は「巴お姉様」というわけだ。まぁ巴の理想は母さんだから、椿芽ちゃんの憧れは結局は母さんに行き着く。だけど俺が杏先生を友達とは見ない(というか見れない、畏れ多くて)ように、椿芽ちゃんにしてみれば母さんは大人の一人で、憧れにするにはそんな雲の上の存在よりももっと身近な巴のほうが都合がよかったようだ。巴も椿芽ちゃんを妹のようにかわいがっていて、二人の仲はとてもいい。ああ、ちなみに実体験から言わせてもらえば、妹なんてそんないいもんじゃない。
で、その巴お姉様の兄だから、朋幸お兄様。おまけ扱いのどうでもいいツマ。決して尊敬の念とか畏怖のオーラとかそんなんじゃない。時々「朋幸お兄様(冷笑)」「朋幸お兄様(何でこいつ巴お姉様の兄弟なのありえない)」「朋幸お兄様(死ねば?)」に聞こえたりするので、ぜんぜんうれしくない。というか、「お兄ちゃん」とか呼ばれてゾクゾク感じちゃう奴の気が知れない。そんなのが傍にいたら即効で絶交する。
「だよね」
「な」
「何の話なの?」
俺は椿芽ちゃんに七夕のイメージが沸かないこと、身近な誰かが役を演じれば何とかなること、そして役を演じさせたらどんな物語になるのか考えてみたことをかいつまんで話した。
「はぁ……そんなくだらないことで時間を使ってたんですか」
「や、ほら、七夕のイメージ沸かないと、短冊に書けないじゃん」
「そうそう」
椿芽ちゃんはため息を一つ吐いて「仕方のない二人だなぁ……」と呟いた。
「で、誰が残ってるんですか」
「誰、って言われてもねぇ……」
「監督と早苗さんならどうだ?」
俺が提案すると、翔が頷いた。
「あの二人なら普通じゃない伝説になりそうだね」
「じゃあ、こんな感じですか」
椿芽ちゃんが手を叩いた。
古河家シニアバージョン
昔むかし、天の川のほとりに、天帝の娘である織姫が住んでおりました。ある日織姫が川のほとりで機を織っておりますと、彦星が通りかかり、そして二人は恋仲になりました。
「織姫、愛してる」
「ありがとうございますっ!わたしもですっ」
しかし、こまったことに織姫は恋に目覚めていろんな独創的なアイディアが浮かぶようになり、それは趣味のパン焼きにも及びました。そのパンのまずいことまずいこと、三千世界の果てまで探してもこれほどのものは
「私のパンは……私のパンは……」
あ
「この次元で最もまずかったんですねぇぇぇえええええええええええええええええええええっ」
「俺はっ!大好きだぁぁああああああああああああああああああああああああああああっ」
……こうして空の国は今日も賑やかです。終われ
「もうこれ、物語ですらないよね」
「というか七夕関係ないのな」
俺たちが口々に感想を言うと、椿芽ちゃんが頬を膨らませた。
「お兄ちゃんや朋幸お兄様が短冊書くのに必要だったから考えたのに、その反応は何?」
「まぁまぁ、おかげで短冊も書けたし」
俺はぴらっと短冊を見せた。
「ふーん、どれどれ……あ」
翔が間の抜けた声を出した。
「それ、いつものことです」
「だったな」
「何の話だよっ!それより、僕もできたんだけどさ」
翔が笑いながら短冊に書かれたものを俺に見せた。今度は俺が間の抜けた顔をする番だった。
「それもいつものことです」
「ななな何だってー」
「ほら、朋幸ツッコんでないで、早くこれ竹に飾りにいこうぜ」
「へいへい」
俺たちは笑いながら部屋を出て階段を降りていった。
「あ、遅かったじゃない」
杏先生が台所から顔を出した。
「できたの?まさかカンニングしに来たわけじゃないわよね」
「朋幸、できたのか」
母さんも顔を覗かせた。
「へーい」
「じゃ、見せてみて」
俺たちはシンクロしたかのようにぴららっと短冊を見せた。
「えーっと……ふーん?」
短冊を返して、杏先生は肘に手を当てて口を違う手で隠す例のポーズを取った。母さんはと見ると、「ふむ」と呟いて腕組みをしていた。
「これ、偶然……よね。あんたたちだったらこんなこと考えていそうだし」
「いやぁ、そんな褒めなくても」
「別に褒めてなんかないわよ」
「にしても母さん、それ」
俺は母さんが手にしているお盆を指差した。空の徳利やらビール缶やらが整頓されて乗っていた。
「父さんたち、飲んでるの?」
「ああ。それなりにな」
「本人たちはあんたらが遅いからだって言ってるんだけど、あれは確信犯的計画犯よ」
「風流もヘチマもないな、あれでは。仕方のないやつらだ」
母さんがため息を吐いた。無理もない。父さんと春原のおじさんは酒が入ると決まってとある行動パターンに入る。とどのつまり、どちらかが嫁自慢をはじめ、それに対抗するようにもう一人が自慢し、そしてそれが口論になる。無論、しらふである当の本人たちにはありがた迷惑だったりする。
「というわけで、居間の騒ぎを終わらせるためにも、さっさと吊るしてきなさい」
杏先生に命令されて、俺たちは修羅戦場と化している岡崎家のリビングに足を踏み入れた。
ちなみに。
以下がその時短冊に込められた願いだった。どれが誰のか、まぁ大体わかると思う。
「岡崎最高」
「家族息災」
「まだ死にたくないです」
「椿芽とバカ二人が元気でいられますように」
「これからもバカやってられますように」
「みんなが元気でいられますように」
「早く巴お姉さまみたいになりたい」
「これからもバカやってられますように」