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―――もし

  もし、あなたが勇者として、以下の状況に立たされたら、あなたはどうするだろうか。

  この世界には、条件が揃うと起きるとされる大災害がある。
  その災害の詳細に関しては、あなたの想像力に任せる。火山噴火や大地震という自然災害でもいい。宇宙人の侵略でもいい。北極から大きな亀のような怪獣が現れるとしてもいい。とにかく、ひとたび起きれば、世界は間違いなく滅ぶというような災害だ。
  今までそのような災害は二度起こっている。その度に人類は滅亡の淵に立たされつつも、その叡智を振り絞り、互いを信頼し、力をあわせてやり過ごしてきた。 しかし、災害は起きるたびに規模が大きくなるとされ、次に起きた場合は滅亡は免れないと言われている。事実、前回だってぎりぎりだったのだ。
  その三度目の災害は、あなたにとって一番大事な人と深くかかわりがあると言われたらどうだろうか。
  三度目が起きる条件とは、こうだ。

「あなたの大切な人が、一日を笑顔で送ること。また、あなたの大切な人が、他人の思惑によって死ぬこと」

  何の因果なのかは想像に任せよう。古の呪いなのかもしれないし、宇宙人の気まぐれかもしれない。バタフライ効果も考えうる。
  とにかく、この条件が満たされぬよう世界中の政府機関が暗躍し、あなたの大切な人は命は保障されているものの、一日に一回はつらい仕打ちを受けるようになってしまった。
「仕方がないよ。私がこうなることで世界が救われるんだから」
  そう悲しく笑う彼女。さて、あなたはどうする?

一 世界のために、彼女には悪いけど耐えてもらうしかない
二 世界なんてどうでもいい。彼女をずっと笑わせてみせる








「迷うまでもなく『二』だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
  俺が絶叫すると、鷹文がどことなく呆れ返ったような目で俺を見た。
「ねぇ、にぃちゃん。そこらへん、少し迷うとか、そういうのないの」
「智代が笑えない世界なんざ、あってもしょうがない」
  キラッ、とさわやかな笑顔とともに言ってやった。鷹文は尚も何か言おうとして、そして黙り込んだ。
「つーか鷹文、このゲーム、『一』を選んだら間違いなくバッドエンドだろ」
「まあね」
  鷹文が笑って認めた。
  とある日曜日の昼ごろ、俺は鷹文の試作ゲームを遊んでいた。遊んでいると言っても、バグがないかチェックしてほしいということなので、ありとあらゆる選択肢を試して確認しなければいけないわけだが、それはまあともかく。
「あの二人は、何をやっているんだ」
「さあ。あんま知りたくねーっす」
「会ったらゲームという思考回路が出来上がりつつあるんじゃないか?それは困るぞ」
「さあ。あんま知りたくねーっす」
  隣の間で智代と河南子が呆れすら通り越して無感情に話しているが、まああまり気にならない。すみません嘘ですそんな軽蔑しきった目で見ないでくださいギブミーラブプリーズともぴょん。
「そういえば、先輩が一日中笑っていられる、で思い出したんですけど」
「うん、何だ」
「今年は誕生祭、やるの」
  ぎくっ
「ふむ……今年はまだその話はしていなかったな」
「えー、何だそりゃ。先輩も旦那がカイショーナシだと苦労しますなぁ」
  だらだらと冷や汗を垂れ落としながら、俺は智代と河南子の会話に聞き入っていた。
「まあでも、今年は朋也も忙しいらしいからな、なくてもいいんじゃないか」
「ゲームやってんのに忙しいんすか?騙されてないかなぁ」
「あれは鷹文の手伝いだろう?違ったのか」
「奥さん、旦那さんを信じたい気持ちもわかりますが、真実を見つめる勇気も必要です」
「ま、まさか、朋也は私に黙って違う女と……そうか」
  背筋が凍った。ああ、来ますか。ここんところこういう傾向がなかったから安心だなぁっておもってたけど、やっぱ来ますか。
「そ うか……そうだろうな。私のように女の子らしくない女性に慕われても、朋也にとっては迷惑だったんだろうな。朋也もつらかっただろうに、今までずっと私に 我慢して、私が変わると信じて、そう思って一緒だったんだろう。それなのに私は……一緒にいる資格なんてないな。だけど、私は朋也がいないと生きていけな い。だったら……いっそのこと……」
  ババン、と襖を開いて俺は声高に宣言した。
「智代、付き合ってくれ」
「もうその段階は超えた」
「智代、結婚しよう」
「もうしている」
「智代、愛してる」
「え、あ、うん、わ、私もだ」
「智代、誕生日祝いをしよう」
「え……い、いいのか」
  こくん、と頷いた。
「俺、智代の誕生日ケーキを焼くのが夢だったんだ」
「焼けないだろう、現実的に」
「もとい、俺、智代の誕生日ケーキを古河パンから買ってくるのが夢だったんだ」
「古河パンもおいしいが、私もケーキは焼けるぞ」
「なら俺はそのケーキを食べるのが夢だったんだ」
「うんっ!なら期待していてくれ。朋也のためにすっごくおいしいケーキを作るぞっ」
「智代っ」
「朋也っ」
『何のこっちゃ……』
  鷹文と河南子がため息をついていると、ばばーんっ、と玄関の扉が開いた。
『待ってましたっ!!』
  いきなりずかずかと上がり始める人の波に、俺と智代、いや、今度ばかりは河南子すらも唖然としていた。


  数分後、所狭しと俺のアパートに押しかけた人を代表して、杏が訊いた。
「で、やるのよね」
「いや、そりゃ、まぁ……」
「あァん」
「はい、やりますやらせていただきます」
  目がマジだった。
「しょうがないでしょ、毎年これやんないと製作所に人来ないし、そうなると古河パンもFolkloreもてうちもスポンサーじゃなくなるし……」
  ぼそりと春原がつぶやいた。
「そこ、黙る」
「はひっ」
「あの、岡崎さん」
  ずい、と古河が前に出た。体弱いんだから、こんなぎゅうぎゅう詰めになってるところにこんでもいいだろうに。智代なんか、見ろ、場所がなくて仕方ないから俺の膝の上に腰掛けてるんだから。俺はまあ場所がないからそんなはにぃを絶賛ハグ中なんだぜ。狭いって大変だ。
「私……気になりますっ」
「のわっ」
  古河が急にずずい、と来たので俺は素っ頓狂な声を出した。
「いつから誕生祭なんでしょうか。テーマは何なんでしょうか。カップリングは自由なんでしょうか。内容にはどんな制限があるんでしょうか。具体的に何を送ればいいんでしょうか。Pixivからの投稿の場合、何に気をつけたらいいんでしょうか。私、気になりますっ」
  何だか一瞬古河の髪が伸びて俺に巻きついたり、複数の小さな天使の格好をした古河に纏わりつかれたような錯覚を覚えた。
「えっと、とりあえず落ちついてだな。一つ一つ解決していこう、な」
「あ、はい」
  こほん、と俺は咳払いをすると、古河も凛とした、しかし冷静な感じで問答を始めた。



「まず、何をどこに送ったらいいんですか」

「HTML、 テキストファイル、ワード文章(SSの場合)またはDNMLのタイトルとリンク(DNMLの場合)またはJPG、GIF形式の イメージを、うちの脚本担当のクロイ≠レイまでにメールで送ってくれ。その時、作品名、作者名、ジャンルとメインキャラを忘れずにな。また、Pixiv投 稿の場合はタグに 「CLANNADダブル誕生祭3」と記入して連絡を取っていただければ、それを会場にてコピー&ペースト方式で公開する」


「開催期間はいつからいつまでですか」

「十月十四日から十一月四日まで」


「これは、誰でも参加していいんですか。一人一作ですか」

「もちろん。経験とかなんて関係ない。一人何作でも歓迎。ただ、作品への愛があれば、な」


「ジャンルは決まってますか。クロスオーバーとかもありですか」

「ジャンルは自由。ただしテーマは『坂上智代の誕生日』『岡崎朋也の誕生日』が絡んでなけりゃいけない。クロスオーバーもあり。だけど18禁はなしだ」


「主人公は誰でもいいんですか。あと、カップリングは岡崎さんと智代さん限定ですか」

「主人公は誰でもいいし、カップリングも自由。だけど俺は個人的に智代命だからな。浮気してないからな。抓らなくても……あだだだだだだ」


「最後に何か一言ありますか」

「総っ員っ!!完全燃焼ハイパーすげえごっつく楽しむこと、命を燃やして」





「―――それじゃ」
  杏がふふん、と笑った。
「みんな、覚悟はいいわね」
「へっ、ここで逃げたらキング春原の名が泣くね」
「そんな渾名があったのか?初耳だぞ」
「小僧共、俺様の足を引っ張るなよ」
「頑張って独創性の高いパンを焼きますね」
「手料理を作って、待ってます」
「ヒトデですっ」
「楽しみなの」
「ふむ……愛だな」
「それでは……見せてもらおうとするかの」


「おっしゃあ、みんなっ!始まるぞっ!!

『おおおおっ!!』

 

 

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